題詠blog2014001:咲 咲き満ちて散るほかはなき花びらがひらひらとそよかぜに乗る 002:飲 氷砂糖たつぷり入れて仕込みたる苺酒とろり今が飲み頃 003:育 育児書に日光浴が推されゐしわが子育ての日々はるかなり 004:瓶 亡き母の秘蔵の備前の花瓶には殊に似合へり赤き椿が 005:返事 五秒おきに話もきかずに「うん}と言ふ 夫の不機嫌飽和状態 006:員 員数を揃へるためと知りつつも誘ひくれればすぐに参加す 007:快 「快心のできばえです」と贈らるる友の焼きたるコーヒーカップ 008:原 昨夕よりの雨のあがりて風強し富士を見晴らす三保の松原 009:いずれ 「いづれまた」「そのうちきつと」と別れ来ぬたぶんこれきり逢へぬあなたと 010:倒 椅子の背を倒して少し眠らむか高度一万機中の闇に 011:錆 錆付ける蝶番のごとわが膝は曲げればぎーっと音をたてたり 012:延 どれもまだ捨てる気持ちになれなくてわが断捨離を一時延期す 013:実 「実はね」と話し始める友の声受話器の中で消えさうになる 014:壇 仏壇を置かぬ我が家は本棚に父母の位牌と写真を祀る 015:艶 エネルギーを内にたくはへ椿の葉四月の丘に艶々と照る 016:捜 さがしても探してもさらに捜しても結句に相応ふ言葉に逢へず 017:サービス スーパーの開店記念のサービスの赤い風船 「あ、飛んでった」 018:援 イル・ディーヴォのCDを買ひ又聴けり復興支援歌「Flower will bloom」 019:妹 亡き姉の齢を三十余り越ゆ 気持ちは今も妹なれど 020:央 「開通の圏央道を通ろう」と迂回承知でハンドルを切る 021:折 折々にメールを交はし友とわれ淡いが長き付き合いとなる 022:関東 スカイツリーの展望デッキに望みたり関東平野の果ての筑波嶺 023:保 保温力失せこし故か ちかごろは夏にも時にショールをはおる 024:維 現状維持ができればよいと妥協する 体力、気力・・・愛情もまた 025:がっかり 「またがある がつかりしないでくださいね」 熱燗一杯君に勧める 026:応 ふくらめる桜のつぼみ春の陽に応へて今日は開きそめたり 027:炎 晴れ渡る夏空のもとハイウエイ―の行く手に立ちて陽炎揺れる 028:塗 壁に塗るペンキ買ひきて一カ月まだ手つかずに物置にあり 029:スープ スープにも桜はなびら浮かべたりわがキッチンのソパ・プリマベラ 030:噴 噴水が吹きだす形そのままに凍りつきたり零下十二度 031:栗 栗おこは蒸かして姑は待ちましき八幡さまのお祭りの宵 032:叩 百回もボウルに叩きつけられてパン生地はわがストレスを消す 033:連絡 「近くまた連絡します」と別れしがそのまま一年経ちてしまひぬ 034:由 後を追ひ猫がまとわりつきたるが今日のあなたの遅刻の理由 035:因) 「因みに・・・」と言ひて勝手に語りだす 他人の話を効かぬ老人 036:ふわり 三度四度大きく羽ばたき青鷺はふわりと体を宙に浮かせり 037:宴 そよ風のやうにこつそり吹きぬける寂しさ残し宴は果てたり 038:華 華氏百度の夏にも慣れてテキサスに住まふ次男の声は明るし 040:跡 凍てつきて朝の光に輝けり雪に遊びし子らの足跡 041:一生 「一生の収支はゼロさ」と苦しさを笑ひとばせりガンを病む人 042:尊 尊厳死望みゐし母その通り意識亡くして二日で逝けり 043:ヤフー 路線情報さがせどヤフーにみつからずあの世の母に会ふdirection 044:発 乾杯の発声はやはりおいしゃさん 老人達の同期会では 045:桑 桑の葉をとりては拭きて入れやりき子らが飼ひゐしおかいこさんに 046:賛 賛成はするが協力してくれぬ 忙しすぎる人の多くて 047:持 やさしさを素直に出せる少年がスーツケースを持ちてくれたり 048:センター ショッピングセンターに来て座り込む夏の日盛りまだまだ残暑 049:岬 海渡り吹き来る風になびきをり岬に生える芒の穂波 050:頻 鳴き交はすカモメの声が頻りしてまもなく今日の陽が昇り来る 051:たいせつ たいせつな思ひ出ひとつ スペインの旧市街で見し冬の満月 052:戒 「あまりテレビを見てはだめよ」と児らに言ふおほいに自戒の意味を含めて 053:藍 幾重にも重なり合へる山並みの遠きは淡きあはき藍色 054:照 虹あはく東の空に見えはじめまだ降りやまぬ日照雨(そばえ)が光る 055:芸術 芸術が宗教に屈しゐしゆゑかベラスケスの絵おどろおどろし 056:余 日没のあとに残れるひとすじの余韻のやうなくれないの雲 057:県 この秋は岩手県への旅をせむ これで全県踏破完了 058:惨 雨に濡れ人を待つうちつくづくと惨めになりぬ 心冷え来て 059:畑 庭隅の野菜畑の葉の陰にかぼちゃの花がほつかりと咲く 060:懲 懲らしめと五歳の我を押し入れに閉じ込めし母 苦しかりけむ 061:倉 正倉院の鳥毛立女の顔立ちも姿もスーザン・ボイルに似たり 062:ショー 「ショ―はもうこれで終わり」といふごとくスーパームーン雲に隠れる 063:院 入院の荷物一式整へて最後に入れるブックリーダー 064:妖 妖怪のベストフレンド鬼太郎を見て育ちたる子らも中年 065:砲 難聴で大声なりき若き日を砲兵としてすごしし父は 066:浸 ハーモニーの余韻に浸り目を瞑る イル・ディーボのCD一人聴き終へ 067:手帳 終活の手始めとして母子手帳を子らそれぞれに送り届ける 068:沼 沼に棲む食用ガエルがグルルルと低く鳴きつぐ 喉を震はせ 069:排 排斥をされても負けぬトヨタ車が米大陸を堂々とゆく 070:しっとり しつとりと優しき女(ひと)になる夢の叶はぬままに嫗さびたり 071:側 生きている側から見れば仏壇のご先祖さまは気楽さうなり 072:銘 濃淡の紫なりき若き日に母の着てゐし矢がすり銘仙 073:谷 息子らに押し上げられるやうにして谷川岳の頂上に着く 074:焼 焼き魚は家では出さぬメニューなり マンション住まいとなりてこのかた 075:盆 亡き姉の好物なりし〈きみしぐれ〉お盆の度に供へつづける 076:ほのか 初恋のほのかさほどに淡あはと紅に染めたりはなびら餅を 077:聡 聡明な子らに育てと名付けたり長男聡、長女は明子 078:棚 若き日の自分のことは棚にあげ息子がその子を静かに諭す 079:絶対 絶対に怒らぬからと言ひしゆゑ作り笑顔で終はりまで聞く 080:議 議事録をドアの下より差し込みて会議初日の仕事を終る 081:網 十月の雨の晴れ間に洗ひたり働き疲れの網戸五枚を 082:チェック 二週間目の術後チェックが無事済みぬ 何から先にやらうか今日は 083:射 矢が的をピシリと射ぬく瞬間を待たずに射手は馬を駆けたり 084:皇 天皇陛下を「てんのうさん」と言ひませり 京都に生れ育ちし友は 085:遥 春秋の彼岸は遥拝のみとなる 逝きて年経し父母の墓 086:魅 首細きヘップバーンの初々し『魅惑のワルツ』を甘く踊りて (映画「昼下がりの情事」より) 087:故意 〈こい〉と打ち変換すればワープロが〈故意〉と応じる 〈恋〉だつたのに 088:七 お七夜の済んだばかりのいもうとの髪を撫でをり二歳の兄が 089:煽 すし飯を混ぜつつ五歳に煽がせる いつかこの日が思ひ出となる 090:布 久々に来る子を待ちて下ろしたる布巾なかなか水を吸はない 091:覧 故宮展を東京に見て福岡にまた見んとする 特に「書」の部を 092:勝手 晴と褻に住まひも別れ玄関と勝手口とのありしふるさと 093:印 旧姓の象牙の印をしまひ持つ 成人の日に母に貰ひき 094:雇 呼び名のみ雇用保険と変りても気持ちはやはり失業保険 095:運命 運命は決まりてゐしと気付かずに回り道して今日に至りぬ 096:翻 インターネットと共に変革遂げてきぬ翻訳業のわが四十年 097:陽 さつと差す雨の合間の陽の光 楓の赤をきららかにする 098:吉 おみくじに末吉引きて十カ月そろそろ「吉」のやつて来る頃 099:観 お互ひを理解できぬと達観し夫婦はやつと家族になりぬ 100:最後 頑張らずディミニッシェンドで去り逝かん一世一代おしゃれな最後 ジャンル別一覧
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